渋ビル愛好家が語る“中産連ビル”

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渋ビル愛好家が語る“中産連ビル”

50幾年経った現在もなお、ビルとそれを守る人達が両輪となり、
その「場」を未来へ繋ごうとしている。

 これは、私たち名古屋渋ビル研究会が2015年5月に発行した『名古屋渋ビル手帖中産連ビル特集号』の巻頭で記した一文です。仮に2025年に同誌を発行していたとしても、同様のテキストを書くでしょう。発行から10年経過した現在も同様に、むしろその時以上に、偉大な建築家の手による建築が大切に磨き上げられ品格を保っています。

 中産連ビルは日本のモダニズム建築を牽引した建築家のひとり坂倉準三によって手掛けられました。それゆえ空間構成の明快さに惹きつけられる方も多いと思います。訪れる人や街行く人の関わりしろとなる1階の親和性、会議や講習に集中しやすい2~3階の内省性、屋上庭園を臨める4階の開放性といった階によって異なる空間の性質が外観デザインと表裏一体となって機能し、DOCOMOMO Japan選定建築物としても高い評価を得ています。実際、私たちも、どこを切り取っても妥協のない考え抜かれたデザインに魅了され、何度訪れても新しい発見をします。

 一方で、建築の価値は竣工後の維持の仕方によって大きく左右されてしまいます。中産連ビルは、竣工後も上述した特徴を維持しながらも、利用者に快適に過ごしてもらうことを目的に度重なる改修がなされてきました。「変えるところ」と「変えないところ」を的確に判断し、実行していく、これは想像以上に難しいことです。このような長きにわたるご尽力を建築の魅力とともに少しでも多くの方に知って頂きたい、そのような想いで中産連ビルと関わらせていただいています。

 美しい色むらのある緑色のタイル、飴色の艶が出る階段の手摺、湖面のようなPタイルの床。こういった部分にも魅力を感じられるならば、その先にはそれを守ったり、磨いたりしている人の存在があることも魅力のひとつとして感じてほしいなと思います。

令和7年4月
名古屋渋ビル研究会